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Sound Gallery ブログ

吉祥寺のオーディオ機器とNana Mouskouriのレコード・CD専門店ブログ。

NANA MOUSKOURIギリシャ古典劇を唄う

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NANA MOUSKOURIギリシャ古典劇を唄う

NANAがギリシャからパリに持って来た数多いいすぐれた曲の中に、“アリストファネスの鳥”という曲があります。この曲は、アリストファネスアリストパネス)のギリシャ古典劇『鳥』をもとに、NANAの恩師マノス・ハジダキスが作曲し、ロータスのギリシャ語歌詞でうたわれています。

写真上は、1973年12月13日から17日まで、パリのテアトル・デ・シャンゼリゼで行われたリサイタルのライブ・レコーディングです。(FONTANA SFX-5155)このリサイタルで、白鳥アリストファネス作『鳥』より)とアリストファネスの鳥が唄われております。伝統を誇る劇場で、NANAの個性にピッタリのレパートリーをとりあげ、みごとな演唱をくりひろげました。

 

写真下は、1974年11月18日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールに出演し大成功を収めた時のライブ・レコーディングです。(FONTANA FDX-162)この中で、イントロダクションに引き続き白鳥が、エンディングにアリストファネスの鳥が唄われております。

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アリストファネスの鳥については、解説に説明も記載されてなく、以前より気になっていた歌の一つです。いろいろと調べたところ、オペラで上演されていることが判りましたが、演出されているため本来の劇の内容が良く分からないままでした。このたび、古本屋さんで岩波文庫の翻訳本(呉 茂一訳)が入手できましたので、古典劇の概要を簡単に紹介させて頂きます。

 

アリストパネス『鳥』Ornithes
(紀元前414年に大ディオニュシァ祭にて上演された)

世の中に嫌気がさしたアテナイの老人2人(エウエルピデス、ペイステタイロス)が、鳥類の王であるヤツガシラの所に、世の煩わしいことを忘れ、楽をして暮らせる郷を教えてもらおうとの下心を持って、鳥達に案内されてやって来ます。どうしてここに来たのかを鳥達に問い詰められたあげく、ペイステタイロスが鳥達の国を造ることを思い付きます。鳥達が飛び回っている天空に砦を築き、人間どもと神々の通行を遮断し、人間を自由に支配して、神々を兵糧攻めに合わせるという壮大な計画でした。押し問答がありましたが、鳥達が下空と天との間をすっかりぐるりと、大きな焼瓦で覆うことに賛同して、城壁を築きはじめます。天上の神々と、下界の人間どものところに使節を立てて計画を告知します。計画の噂が地上に広まり、建国にあやかって偉業をたたえる神官や詩人や天文学者達がやってきますが、ペイステタイロスがすべてを追い返します。やがて鳥達により天空の砦が完成したとの知らせが入って来ますが、神々からは音沙汰がありません。しかし天界では、下界の空を占拠されて困り果て、ゼウスは3人の使節を送り出します。使節は戦争をやめ、仲良くしようじゃないかと申し入れますが、ペイステタイロスはゼウスが王権を鳥類に譲渡しない限り講和条約を結ばないと頑張ります。なんと使節たちは、ペイステタイロスの説得に応じ、王権を譲ることを了解するのです。調子に乗ったペイステタイロスは、ゼウスの娘のバシレイアを自分の家内にすることを要求し、使節たちを言い負かしてしまいます。ペイステタイロスとバシレイアの婚礼の式での鳥達の大合唱で劇が終わります。
この喜劇は、作者の人間社会の風俗・習慣に対する痛烈な皮肉で知られておりますが、ゼウスが怒って天空の砦を破壊しないのが喜劇なのでしょう。現代においても非常に考えさせられる劇で、喜劇ではすまされない内容です。御興味がある方は、訳者は異なりますが筑摩書房(ちくま文庫 ギリシア喜劇2)又は岩波書店(ギリシア喜劇全集 第2巻)を入手されお読み下さい。当方が読んだ翻訳本は、昭和19年に発行された文庫本の第2版ですが、入手は非常に困難と思われますので、本翻訳本をお捜しの方は当方の店舗ホームページから連絡願います。

 

唄の背景にある古典劇の内容が判った上で、NANAの唄を改めて聴きますと以前に聴いた時より歌のイメージが広がっていきます。アルバート・ホール・ライブのジャケット写真(写真下)のNANAの衣装は『鳥』をイメージしたものに思えてなりません。日本で発売されているCDには、この曲が収められていなのが残念です。

白鳥アリストファネス作「鳥」より
 THE SWANS “Tio ti tio ti”from “The Oirds”

アリストファネスの鳥アリストファネス作「鳥」より
 THOXASTIKO EXODOS  from “The Oirds”