NANA MOUSKOURI 名作オペラ“ノルマ”を唄う
写真上は、1975年にベルギーの首都ブリュッセルにあるモルガン・スタジオにて録音されたアルバムです。(PHILIPS FDX-203 1976)アルバムのタイトル・ナンバーは、“立ち去る人(TOI OUI TE’N VAS)”で、19世紀のイタリアの作曲家ヴィンチェンツォ・ベルリーニ(べッリーニ)の作品で、1831年に発表された名作オペラ『ノルマ』のアリアをポピュラー化したものです。自分の許を去ってゆく相手に向かってうたわれるこの歌を、NANAはせつせつとリリックに唄います。
写真下は、1978年10月のパリ・オランピア劇場でのライブ盤です。(PHILIPS FDX-453~4 1979) NANAはフランス語で曲の説明の後に歌い出します。一度はオペラ歌手を夢見ただけに、NANAの歌声からはその意気込みが感じられます。フランス語歌詞は、クロード・ルメールが書いています。
立ち去る人-冒頭説明-
私がまだ若い娘で、ギリシャのアテネにいたときです。
私は何年間もクラシック音楽を勉強する機会に恵まれました。
もちろん、私はオペラ歌手にはなりませんでしたが、その頃から、私は偉大な音楽に対して深い愛情を抱いていました。
そして最近、私の2人の友達が、ベルリーニのオペラ『ラ・ノルマ』を歌っているエバのレコードを聞いて、私のために手を加えてくれました。
立ち去る人(TOI OUI TE’N VAS)
あなた・・・あなたは行ってしまった
愛が生きている国へ
そこへ・・・あなたは行ってしまった
そんなに遠いところでも
私の悲しい歌が聞こえますか
苦しみとともに生きなければ
孤独とともに生きなければ
あなたは私なしでやっていけると
信じて・・・生きなければ
苦しみとともに生きなければ
孤独とともに生きなければ
あなたはもう戻ってこないと
信じて・・・生きなければ
あなた・・・あなたは行ってしまった
私が影でしかない国へ
そこへ・・・あなたは行ってしまった
そんなに遠いところでも
私の悲しい叫びが聞こえますか
あなたはもう戻ってこないと
この唄の背景には、NANAの離婚劇が秘められているとみるのは思い過ごしかもしれませんが、実感のこもった歌唱と思えてなりません。NANAが思いを込めて唄った“立ち去る人”のオペラの原作は、アレクサンドル・スメの悲劇『ノルマ』です。また、若くして世を去ったベルリーニは、10作のオペラを書きましたが、『ノルマ』はその中でも最高傑作と言われています。ベルリーニ自身も「すべてを棄ててもノルマは助けたい」と述べていたほどです。御興味のある方は、オペラの方も是非!!