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NANA MOUSKOURI “ラブ・マイナス・ゼロ”

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NANA MOUSKOURI “ラブ・マイナス・ゼロ”

写真上は、アルバム・タイトル≪DANS LE SOLEIL ET DANS LE VENT≫(FONTANA 6399 014 1969 FRANCE)の洋盤LPの表面、写真下はその裏面です。このアルバムは、1969年の録音で、1960年代の数々のヒット曲の中から、すぐれた歌詞の歌が選曲され、ナナの初期の歌声による魅惑の演唱を楽しむ事が出来ます。日本では、同様の邦盤LPが、NANA MOUSKOURI FIRST ALBAM≫(PHILIPS SFX-7226 1974?)として発売されています。(以前に、当ブログにて紹介いたしました。)

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ラブ・マイナス・ゼロ

今回は、本LPに収められている≪ラブ・マイナス・ゼロ≫を紹介致します。この曲の原曲は、ボブ・ディランが1965年に発表したアルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』に収録されている≪ラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット LOVE MINUS ZERO OVER NO LIMIT≫です。なんとも難解な曲名ですが、アメリカにおいてディランは、当初は《フォークの貴公子》として大きな支持を受け、時代の代弁者とみなされていました。しかし、彼は「プロテスト・シンガー」という束縛からの解放を次第に望むようになり、その頃に作詞・作曲されました。この曲は、最初の妻となったサラ・ラウンズに捧げた愛の唄と言われています。ナナは、ディランの原詩をもとにしたピエール・ドラノーアのフランス語歌詞で、ジ・アテニアンズをバックに<私の彼>に唄いかけます。
ラブ・マイナス・ゼロ  AMOUR MOINS ZERO  対訳;蒲田耕二

私の彼は 沈黙そのもの

パッションも激しさも見せない

彼の見かけは ちょうど

氷にも 炎にも似てる

他の人達は 何かしてる

約束とか バラの栽培とか

私の恋人は きっと

幸せな人間じゃないのね

 

店先とか 地下鉄では

人々が新しい情勢で 議論している

口角泡を飛ばしたり 新聞を読んだり

壁には スローガンがベタベタ

将来のことになると

彼は口をつぐんで しゃべらない

明日は彼にとって もっと悪いのね

今日の挫折よりもなお

 

生身の肉体が 次から次に

地に倒され 埃となってゆく

狩りの指揮者は 憎しみと欲望にうち震えて

鉄の檻を 開け放つ

狂人と 盗人と 片輪との

巨大な一隊が 出て来るのだ

“ねえ これで治まりがつくの ”

恋人は言う “世の中って こんなものさ”

 

車の往来で 橋が軋み立てる

医者が 怪我人の手当てをする

金を借りるのは いいけれど

お人好しは 高利に泣かされる

風はハンマーの様に うなりを上げ

夜は水辺に 竜巻を呼んで吹き荒れる

私の彼は フクロウのよう

窓辺に止まって 翼をすぼめてる

美しいメロディーに乗って、ナナは醒めた目で世の中を見ている彼に、淡々と語り掛けるように唄います。