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NANA MOUSKOURI “彼は市を通って行った”

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NANA MOUSKOURI “彼は市を通って行った”

写真は、アルバム・タイトルNANA MOUSKOURI/SONGS OF THE BRITISH ISLES≫PHILIPS 9101 024 1976 ENGLAND)の洋盤LPの裏面です。このLPは、イギリス民謡の名唱集で、自然の美をイギリス各地の田園(ウェールズイングランドアイルランドスコットランド)に求めて、各地の代表的な民謡が収められています。日本では、同様の邦盤LPが、ナナ・ムスクーリ/イギリス民謡名唱集≫PHILIPS FDX-228 1976)として発売されています。

彼は市を通って行った

今回は、本LPに収められている≪彼は市を通って行った≫を紹介致します。この歌は、アイルランド北西部に位置するドニゴール州に伝わる古い民謡です。この民謡には様々なバージョンがあるようで、ナナが唄うのは、アイルランドの詩人・劇作家であるパドレイック・コラム(Padraic Colum)が古語を英語に改作した唄で、作曲はハーバート・ヒューズ(Herbert Hughes)による乙女の<悲しい恋>の歌です。以下に、この民謡にまつわる伝承を記述しましたので、歌詞の参考にして頂ければと思います。

≪民謡の伝承≫

私の恋人だった彼は、『私達の結婚は、両親も賛成しており何も問題が無く、結婚の日もまじかい。』と言っていたが、実は両親からは反対されており、私に言い出せずにいた。どうしたものかと一人悶々としていた折、世間の他愛のない噂話を耳にして、思い悩んで自殺してしまった。そして昨夕、逝ってしまった彼が、私の枕元に立ち『もうじきよ貴方、私達の結婚の日も。』と囁いた。・・・・

彼は市を通って行った HE MOVED THROUGH THE FAIR
対訳;ドロシー・ブリトン

私の若い恋人が私に言った 『母は文句無し
父は君の持参金無しのことは軽んじない』
そして 彼は私の傍を離れて言うには
『もうじきよ貴方 私達の結婚の日も』


私の傍を離れて 彼は市を通って行った
そのあちこち行く姿を いとしく見守った
そして 星が一つ出ていた頃 彼が家に向って
夕暮れの白鳥が湖を越えるように 帰って行った


世間が言っていた 『結婚する二人の内
一人は悲しみを秘密に持つに違いない』
そして 彼が品物を持って通った時に 私は微笑んだ
あれが彼との見納めとなったの


夕べ彼が私を訪れ こっそりと入って来た
その柔らかな足どりは 音もたてずに
そして その手を私にのせて こう言った
『もうじきよ貴方 私達の結婚の日も』

ナナは、アラン・ゴラゲール編曲・指揮によるノスタルジックで優美な伴奏に乗って、乙女の淋しい恋の物語を悲しげに淡々と唄います。