NANA MOUSKOURI “激しい雨が降る”
写真上は、アルバム・タイトル≪au THEATRE DES CHAMPS-ELYSEES≫(FONTANA 6325 327 1974 FRANCE)の洋盤LPの表面で、写真下はその裏面です。このアルバムは、1973年12月13日から17日まで、パリのテアトル・デ・シャンゼリゼで行われた、リサイタルのライブ・レコーディングです。本LPには、伝統を誇るシャンゼリゼ劇場で繰り広げられた演唱の模様が生き生きと捉えられています。日本では、同様の邦盤LPが、≪シャンゼリゼ劇場のナナ・ムスクーリ≫(FONTANA SFX-5155 1974)として発売されています。
激しい雨が降る
今回は、本LPに収められている≪激しい雨が降る≫を紹介致します。この曲の原曲は、ボブ・ディランが作詞・作曲した<A Hard Rain’s a-Gonna Fall>(旧邦題「今日も冷たい雨が」)です。ディラン独自の象徴的なイメージがメッセージに託されており、多様な解釈が出来る難解な歌詞となっています。ナナは、ボブ・ディランのフォーク・ソングを、ピエール・ドラノエによるフランス語歌詞で、見事に自分のものとして、じっくりと力強く唄い込んで行きます。
激しい雨が降る LE CIEL EST NOIR
眼の青い息子よ 何処から来たの
不幸な様子の息子よ 何処から来たの
私は歩き回った 十の古い道を
踏みつけた 木の無い二十の森の木の葉を
散歩した 三十の死んだ海の前を
四十の山の肌に 足跡を印した
徒刑の道を 十マイルも歩いた
空は暗い 空は暗い
暗い 暗い
降って来るのは黒い雨
息子よ その青い眼で何を見たの
息子よ 何を見たの そんな不幸な様子をして
狼の口の中に 新しい赤ん坊が生まれたのを
ガンジスの様に汚れたダイヤの道を見た
ルーブルの庭の彫像の上に 血を
新しいミケランジェロの筆の上に 血を
もう喋らない 沢山のお喋り婆さん達を
翼の上を飛ぶ 白い鳥を
ボンベッシュをして遊ぶ子供を
空は暗い 空は暗い
暗い 暗い
降って来るのは 黒い雨
何を聞いたの 青い眼をした息子よ
何を聞いたの 不幸な様子をした息子よ
私には世界の果ての雷鳴が聞こえた
影の中からやって来る足音が
聴衆の居ない楽師達の演奏が
どうでもよい人々の 沢山の叫びが
悲しげな人をあざわらう与太者の声が
音楽を探す詩人の歌が聞こえた
舞台で鳴くピエロの声が聞こえた
空は暗い 空は暗い
暗い 暗い
降って来るのは 黒い雨
青い眼をした息子よ
不幸な様子をした息子よ
私は死んだ白い馬の上に 小さな影と会った
金を配っている億万長者に
嘘をついたと告白する公証人に
ガソリンをかぶる学生に
私にフランスをくれるプロシャの王に
チャンスも無しに走り回る年寄りに会った
空は暗い 空は暗い
暗い 暗い
降って来るのは 黒い雨
何をしたの 青い眼の息子よ
何をしたの 不幸な様子をした息子よ
雨が降る前に 私はまた出掛けるわ
暗い森の奥深く隠れる為に
そこでは人はみんな貧しくて
男は自分の島を持っている
そこでは涙も 寄る年波も何も無い
そこでは全ては同じで けれど監獄の城の様
死刑執行人が花を投げながら あなた方を殺す
泥棒と被害者が 嘘つきポーカーに興ずる
そこは 色は黒 番号はゼロ
やがて私は帰り 世界に叫ぶ
山の高みから 影の底まで
そして 深い海の上を歩くだろう
そして 静かに私の墓の中に沈んで行く
空は暗い 空は暗い
暗い 暗い
降って来るのは 黒い雨
ナナはコーラスを従えて、ドラマティックに唄を盛り上げていきます。9分近くの大熱唱で、ナナの想いが込められた名唱を聴く事が出来ます。