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吉祥寺のオーディオ機器とNana Mouskouriのレコード・CD専門店ブログ。

NANA MOUSKOURI “オール・スルー・ザ・ナイト”

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NANA MOUSKOURI “オール・スルー・ザ・ナイト”

写真は、アルバム・タイトルNANA MOUSKOURI/NANA’S BOOK OF SONGS≫(FONTANA 9299 227 1974 ENGLAND)の洋盤LPの表面です。本LPは、スタンダードな名曲を中心に、ナナが愛を込めてしみじみと唄い聞かせてくれる英語歌詞によるアルバムです。日本にては、同様の邦盤LPが、≪谷間に三つの鐘が鳴る/ナナ・ムスクーリ(FONTANA SFX-6036 1975)として発売されています。

オール・スルー・ザ・ナイト

今回は、本LPに収められている≪オール・スルー・ザ・ナイト≫を紹介致します。この曲は、伝統的なウェールズ民謡で、邦題名は≪夜もすがら≫(一晩中・夜通しの意)として知られています。ウェールズ語の原詩は1863年ウェールズ民謡の収集家で詩人でもあったセイリオッグ(John Ceiriog Hughes)により書かれた、讃美歌のような唄です。英語版の歌詞は、子守唄風の内容のものや様々なバージョンがあります。ナナは、一番目と二番目の歌詞をプライスとジョーンズ(A.G.Prys-Jones)による英語歌詞で、三番目はウェールズ語の原詩で、<美しい夜の調べ>を唄います。

オール・スルー・ザ・ナイト ALL THROUGH THE NIGHT(Ar Hyd y Nos)

空のすべての星は 歌っています
夜を通して(夜もすがら)
鳴り響く荘厳な音楽を 聞きましょう
夜を通して(夜もすがら)
甘い優美な 大空の歌
平和で潔らかな国に訪れる
そう! 暗闇は光明へ導いてくれるのです
夜を通して(夜もすがら)


ご覧なさい 愛しい人 微笑んでいる星たちを
夜を通して(夜もすがら)
明るさ 和らかさ そして欺瞞
地球の暗い苦しみ
たとえ時が 悲しみと苦しみをもたらしたとしても
信頼を分かち合うことが出来るのです
私達はお互いに 美しい明日に向かって
夜を通して(夜もすがら)


きらめく星は皆言っている
夜もすがら
「光栄の国への道はここにある」
夜もすがら
暗黒は異なる光であり
天の家族の 実際の美を
孤独の中で示している
夜もすがら

ナナは、ピーター・ナイト伴奏指揮による美しいメロディに乗って、夜空に輝く星に託した人々の<祈り>を、詩情を込めて切々と唄います。

NANA MOUSKOURI “彼は市を通って行った”

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NANA MOUSKOURI “彼は市を通って行った”

写真は、アルバム・タイトルNANA MOUSKOURI/SONGS OF THE BRITISH ISLES≫PHILIPS 9101 024 1976 ENGLAND)の洋盤LPの裏面です。このLPは、イギリス民謡の名唱集で、自然の美をイギリス各地の田園(ウェールズイングランドアイルランドスコットランド)に求めて、各地の代表的な民謡が収められています。日本では、同様の邦盤LPが、ナナ・ムスクーリ/イギリス民謡名唱集≫PHILIPS FDX-228 1976)として発売されています。

彼は市を通って行った

今回は、本LPに収められている≪彼は市を通って行った≫を紹介致します。この歌は、アイルランド北西部に位置するドニゴール州に伝わる古い民謡です。この民謡には様々なバージョンがあるようで、ナナが唄うのは、アイルランドの詩人・劇作家であるパドレイック・コラム(Padraic Colum)が古語を英語に改作した唄で、作曲はハーバート・ヒューズ(Herbert Hughes)による乙女の<悲しい恋>の歌です。以下に、この民謡にまつわる伝承を記述しましたので、歌詞の参考にして頂ければと思います。

≪民謡の伝承≫

私の恋人だった彼は、『私達の結婚は、両親も賛成しており何も問題が無く、結婚の日もまじかい。』と言っていたが、実は両親からは反対されており、私に言い出せずにいた。どうしたものかと一人悶々としていた折、世間の他愛のない噂話を耳にして、思い悩んで自殺してしまった。そして昨夕、逝ってしまった彼が、私の枕元に立ち『もうじきよ貴方、私達の結婚の日も。』と囁いた。・・・・

彼は市を通って行った HE MOVED THROUGH THE FAIR
対訳;ドロシー・ブリトン

私の若い恋人が私に言った 『母は文句無し
父は君の持参金無しのことは軽んじない』
そして 彼は私の傍を離れて言うには
『もうじきよ貴方 私達の結婚の日も』


私の傍を離れて 彼は市を通って行った
そのあちこち行く姿を いとしく見守った
そして 星が一つ出ていた頃 彼が家に向って
夕暮れの白鳥が湖を越えるように 帰って行った


世間が言っていた 『結婚する二人の内
一人は悲しみを秘密に持つに違いない』
そして 彼が品物を持って通った時に 私は微笑んだ
あれが彼との見納めとなったの


夕べ彼が私を訪れ こっそりと入って来た
その柔らかな足どりは 音もたてずに
そして その手を私にのせて こう言った
『もうじきよ貴方 私達の結婚の日も』

ナナは、アラン・ゴラゲール編曲・指揮によるノスタルジックで優美な伴奏に乗って、乙女の淋しい恋の物語を悲しげに淡々と唄います。

NANA MOUSKOURI “小さな幸せ”

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NANA MOUSKOURI “小さな幸せ”

写真は、アルバム・タイトル≪愛のひととき/ナナ・ムスクーリPHILIPS 28PP-8 1980)の邦盤LPの表面です。このLPは、有名曲とオリジナル曲がバランス良く配分され、ナナの透明感溢れる唄声に、美しい旋律が輝きを増すアルバムとなっております。国際的な歌手としての実績が余裕と貫録を感じさせるLPで、美しい風景が心地良いそよ風と共にやって来ます。

小さな幸せ

今回は、本LPに収められている≪小さな幸せ≫を紹介致します。この歌は、フランスのピアニストで作曲家・演奏家としても知られ、ナナとも関わりが深いアラン・ゴラゲールのオリジナル曲で、クロード・ルメールがフランス語歌詞を書きました。ナナのパーソナリティーにぴったり合った<切ない恋の想い出>の歌です。恋する彼女の一挙手一投足が、疑心暗鬼になる<小さな幸せ>の心境が綴られております。

小さな幸せ C’ETAIT HIER

あずまやの中で 彼女はなんと美しかったこと
海の上の楽園の お姫様
ラベンダーの瞳と 優しい微笑み
でも 地獄の太陽を持っているよう
貴方は彼女しか見ていなかった 彼女しか
私のように
貴方しか見ていなかった 私のように


あれは昨日 違うところだった
小さな幸せが呼ぶ 大きな戦い
あれは昨日 違うところだった
小さな幸せが呼ぶ 大きな戦い


あずまやの中で 彼女は相手にしなかった
海の上の楽園の お姫様
薄暗い中で 遠く離れ
昔の物語の女王のよう
でも 心は確かに彼女だった
貴方は希望と視線と溜息で 死にそう
私は貴方に言えない悲しみで 死にそう


あれは昨日 違うところだった
小さな幸せが呼ぶ 大きな戦い
あれは昨日 違うところだった
小さな幸せが呼ぶ 大きな戦い


あれは昨日 違うところだった
小さな幸せが呼ぶ 大きな戦い
あれは昨日 違うところだった
小さな幸せが呼ぶ 大きな戦い

ナナは、気心が知れたアラン・ゴラゲール編曲・指揮の軽妙な伴奏に乗って、恋する彼女への切ない想いを、軽やかなヴォーカルで唄い上げます。

NANA MOUSKOURI “LE PETIT BOSSU”

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NANA MOUSKOURI “LE PETIT BOSSU”

写真は、アルバム・タイトルNANA MOUSKOURI “Quand tu chantes”≫PHILIPS 9101 093 1976 CANADA)の洋盤LPの表面です。このアルバムは、1976年の録音で、ヒット・パレードを賑わした曲だけでなく、<知られざる>名曲を厳選して取り上げております。ナナのさりげない素直なフィーリングの中に、彼女ならではのユニークな個性が発揮されています。日本にては、同様の邦盤LPが≪青空の恋人/ナナ・ムスクーリPHILIPS FDX-309 1977)として発売されています。

LE PETIT BOSSU

今回は、本LPに収められている≪LE PETIT BOSSU≫を紹介致します。この歌は、オーストリアの作曲家であるロベルト・シュトルツ(Robert Stolz)の曲に、ドイツの作詞家であるブルーノ・バルツ(Bruno Balz)が作詞したドイツの歌です。この歌に合わせクロード・ルメールがフランス語歌詞を書いたもので、心優しく美しい娘のお話が綴られております。ナナは、少女の心暖まる物語をしみじみと唄います。
尚、邦題名と対訳の一部に、差別的な表現と思われる箇所があるため、邦題名の方は省略させて頂きました。対訳の方は、歌の内容を把握するのに必要なため記載しております。

LE PETIT BOSSU

昔 遠く離れた村に
忘れることの出来ないほど優しい娘がいました
太陽も今だかつて
こんな美しい娘を見たことがないくらい
それは娘の結婚式の前の晩でした
その村に 一人の小さな男がやって来たのは
そして その男の背中を見て
人々はみんな笑いました


小さなせむし男 ここから去ってくれ
お金をやるから 夜のうちに去ってくれ
他の地へ旅立っておくれ
小さなせむし男は大変悲しんで
また来た道をひきかえしました
恥をかき 失望して・・・その時です 
美しい娘がやって来ました
村の人達をかきわけながら


彼女はその男にキスするために近づきました
彼女はその顔を見て分かったのです
それは婚約者の顔でした
せむしの背中も メーキャップも
彼だという証でしかなかったのです
男は彼女に“僕の未来の妻”と言いました
お前は僕の女王 いやそれ以上だ
お前の心は美しい
心の美しさは 体の美しさにずっと勝るんだ

ナナは、アラン・ゴラゲール指揮の詩情ある伴奏に乗って、心優しい少女の彼に対する想いを余すところなく美しく表現します。

NANA MOUSKOURI “アーモンドの木”

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NANA MOUSKOURI “アーモンドの木”

写真は、アルバム・タイトル≪私のアテネナナ・ムスクーリPHILIPS 28PP-5002 1984)の邦盤LPの表面です。このLPは、曲目の全てがギリシャ語で唄われているギリシャの曲であり、ギリシャが母国である彼女の歌の本質と醍醐味を、たっぷりと味合うことが出来るアルバムに仕上がっています。ベテラン歌手の域に達したナナが、初心に立ち戻って祖国の歌をとり上げました。

アーモンドの木

今回は、本LPに収められている≪アーモンドの木≫を紹介致します。この歌は、ギリシャの作曲家であるD.Lavangasの曲に、ギリシャの詩人であるG.Drossinisが歌詞を書いたギリシャの曲です。題名の<アーモンドの木>は、アンズ、モモやウメの仲間で、アーモンドの花は桃の花にそっくりだそうです。ナナは、アーモンドの木にまつわる微笑ましい情景を描いたドロッシニスの世界を、エキゾティシズム漂うギリシャのメロディーに乗って唄います。

アーモンドの木 I AMYGDALIA

彼女は揺する アーモンドの木
彼女は揺する アーモンドの木
その小さな手で 満開のアーモンドの木を揺すった
肩には花びらで一杯
髪にも花びらで一杯


可笑しかったヨ 花まみれの彼女
可笑しかったヨ 花まみれの彼女
優しく語り掛けたヨ 僕は
体についた花びらを手で払って
キスをしちゃったヨ


間違ってるヨ 頭に花を降らそうなんて
間違ってるヨ 頭に花を降らそうなんて
あせらないでおくれ
そのうち大雨の降る日が来るからね
あせらないでおくれ

ナナは、シンプルな味わいのあるバックのギター演奏に乗って、<アーモンドの木>で起こった幼い少女のお話を、ほのぼのとした雰囲気を醸し出して唄います。