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吉祥寺のオーディオ機器とNana Mouskouriのレコード・CD専門店ブログ。

NANA MOUSKOURI “ホリー・ホリー”

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NANA MOUSKOURI “ホリー・ホリー”

写真上は、アルバム・タイトルNANA MOUSKOURI/COMME UN SOLEIL≫(FONTANA 6325 301 FRANCE)の洋盤LPの表面、写真下はLP見開きのスナップ写真です。このアルバムは、全ての曲がフランス語歌詞で編集されており、円熟味を増した演唱に酔って頂くことが出来るLPに仕上がっております。

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ホリー・ホリー

今回は、本LPに収められている≪ホリー・ホリー≫を紹介致します。この曲の原曲は、アメリカのシンガー・ソング・ライターであるニール・ダイアモンドの1969年のヒット・ナンバーです。曲のタイトル名は≪HOLLY HOLY≫、直訳すると「聖なるセイヨウヒイラギ」という意味の言葉ですが、セイヨウヒラギのトゲトゲの葉や赤い実は、キリストの流した血と苦悩を表すとされ、「キリストの刺」「聖なる木」とも呼ばれています。

この曲に、フランス語歌詞をユベール・イチエが書き、≪夏の朝≫という題が付けられました。夏の朝に生まれた愛が、ファンタジックに唄われます。ナナのリズミカルで軽快なヴォーカルが心地よく響きます。

ホリー・ホリー UN MATIN D’ETE

夏の朝
愛の泉の
澄んだ水が流れる
輝く空に
幸せに泉から
夏の朝
私の愛は生まれた
私の人生の朝に
貴方が通るのを見て
泉のところで
遠く 澄んだ水の中へ
遠く 私の夢は発って行く
遠く 流れに沿って
急流の方へ 遠く 遠く 遠く
日々の河の流れまで
時の大洋の方へ
貴方と一緒に生きたいの
また子供になって 大きくなりたいの
そして苦しみ 死にたいの 貴方と一緒に
貴方と一緒に 貴方と一緒に


夏の朝
愛の泉の
私達の愛も同じ
太陽の方へ走って行く
泉から
夏の朝
私達の愛は生まれた
夏の朝
私達の愛は生まれた
夏の朝
私達の愛は生まれた・・・・・・

クリスチャン・シュバリエの楽団をバックに、ナナの魅惑の歌声が曲調を盛り上げていき、さわやかな好唱を聞かせます。

NANA MOUSKOURI “ラブ・マイナス・ゼロ”

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NANA MOUSKOURI “ラブ・マイナス・ゼロ”

写真上は、アルバム・タイトル≪DANS LE SOLEIL ET DANS LE VENT≫(FONTANA 6399 014 1969 FRANCE)の洋盤LPの表面、写真下はその裏面です。このアルバムは、1969年の録音で、1960年代の数々のヒット曲の中から、すぐれた歌詞の歌が選曲され、ナナの初期の歌声による魅惑の演唱を楽しむ事が出来ます。日本では、同様の邦盤LPが、NANA MOUSKOURI FIRST ALBAM≫(PHILIPS SFX-7226 1974?)として発売されています。(以前に、当ブログにて紹介いたしました。)

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ラブ・マイナス・ゼロ

今回は、本LPに収められている≪ラブ・マイナス・ゼロ≫を紹介致します。この曲の原曲は、ボブ・ディランが1965年に発表したアルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』に収録されている≪ラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット LOVE MINUS ZERO OVER NO LIMIT≫です。なんとも難解な曲名ですが、アメリカにおいてディランは、当初は《フォークの貴公子》として大きな支持を受け、時代の代弁者とみなされていました。しかし、彼は「プロテスト・シンガー」という束縛からの解放を次第に望むようになり、その頃に作詞・作曲されました。この曲は、最初の妻となったサラ・ラウンズに捧げた愛の唄と言われています。ナナは、ディランの原詩をもとにしたピエール・ドラノーアのフランス語歌詞で、ジ・アテニアンズをバックに<私の彼>に唄いかけます。
ラブ・マイナス・ゼロ  AMOUR MOINS ZERO  対訳;蒲田耕二

私の彼は 沈黙そのもの

パッションも激しさも見せない

彼の見かけは ちょうど

氷にも 炎にも似てる

他の人達は 何かしてる

約束とか バラの栽培とか

私の恋人は きっと

幸せな人間じゃないのね

 

店先とか 地下鉄では

人々が新しい情勢で 議論している

口角泡を飛ばしたり 新聞を読んだり

壁には スローガンがベタベタ

将来のことになると

彼は口をつぐんで しゃべらない

明日は彼にとって もっと悪いのね

今日の挫折よりもなお

 

生身の肉体が 次から次に

地に倒され 埃となってゆく

狩りの指揮者は 憎しみと欲望にうち震えて

鉄の檻を 開け放つ

狂人と 盗人と 片輪との

巨大な一隊が 出て来るのだ

“ねえ これで治まりがつくの ”

恋人は言う “世の中って こんなものさ”

 

車の往来で 橋が軋み立てる

医者が 怪我人の手当てをする

金を借りるのは いいけれど

お人好しは 高利に泣かされる

風はハンマーの様に うなりを上げ

夜は水辺に 竜巻を呼んで吹き荒れる

私の彼は フクロウのよう

窓辺に止まって 翼をすぼめてる

美しいメロディーに乗って、ナナは醒めた目で世の中を見ている彼に、淡々と語り掛けるように唄います。

NANA MOUSKOURI “アウトワード・バウンド”

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NANA MOUSKOURI “アウトワード・バウンド”

写真上は、アルバム・タイトルNANA MOUSKOURI/A PLACE IN MY HEART≫(FONTANA 6312 022 1971)の洋盤LPの裏面、写真下は同様の邦盤LP≪LOVE STORY/NANA MOUSKOURI≫(FONTANA SFX-7437 1971?)のLP見開きのスナップ写真です。この初期のアルバムには、シャンソンギリシャのポピュラー・ソング、アメリカのヒット・ソングやニュー・フォークが収められており、ナナのレパートリーの幅広さが伺えます。彼女の魅力と歌曲の美しさをじっくりと味わって楽しめるアルバムとなっています。(以前に、当ブログにて紹介いたしました。)

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アウトワード・バウンド

今回は、本LPに収められている≪アウトワード・バウンド≫を紹介致します。この作品は、アメリカのフォーク歌手兼シンガーソングライターとして有名なトム・パクストンの作詞・作曲です。この世から自由へと旅立つ心情を、ナナはジ・アテニアンズをバックに、素朴で美しいメロディーに乗せて、唄い上げて行きます。
この歌のナナのフランス語バージョンは、≪EN PARTANT≫です。

アウトワード・バウンド OUTWARD BOUND

世間の鎖よ 私達は海を走る船の上
世間の鎖よ 私と貴方の他には 誰も仲間は居ないの
ちょっと前までは
岸辺は私達の良く知っている人達で一杯


世間の鎖よ 終わりのない旅
世間の鎖よ 舳先の下に広がる自由の海
時の彼方に消えゆく あの緑に親しんだ岸辺よ
私達には もう時間は関係ないんだわ 


さよなら アデュ- またね ヴァヤ・コン・ディオス ※
彼等が何を求めていようと それが見つかりますように
前よりも 葡萄酒が美味しい時を思い出すといいわ
私達はもう疑問を持つ必要がないの 
もうこれ以上 何も尋ねないわ


世間の鎖よ 私達は航海でボロボロになった船の上
世間の鎖よ 曲がり道が多い孤独な航跡だったわ
そして事の真理を知ったの
それで私達は満足よ
おとぎ話のように 私達のこの航跡を子供達に話すわ


さよなら アデュー またね ヴァヤ・コン・ディオス ※
彼等が何を求めていようと それが見つかりますように
前よりも 葡萄酒が美味しい時を思い出すといいわ
私達はもう疑問を持つ必要がないの
もうこれ以上 何も尋ねないわ

さよなら;SO FAREWELLの訳
アデュー;ADIEU
(フランス語で長期の別れを告げる挨拶の言葉で、さようなら、ごきげんよう。)
またね;SO LONGの訳
ヴァヤ・コン・ディオス;VAYA CON DIOS
スペイン語で「神と共に行きなさい」の意で、「さようなら」の古語。)

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ナナは≪この世との別離の心情≫を、情感を押さえて淡々と唄います。その知的な抑制のきいた表現力に魅了されます。

NANA MOUSKOURI “時は流れる”

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NANA MOUSKOURI “時は流れる”

写真は、アルバム・タイトル≪青空の恋人/ナナ・ムスクーリPHILIPS FDX-309 1977)の邦盤LPの裏面です。このアルバムは、1976年の録音で、ナナのさりげない素直なフィーリングの中に、何とも言えない情感を醸し出した、彼女ならではのユニークな個性が発揮されているアルバムです。また、“知られざる名曲”を数多く収録し、すぐれた作品を厳選してうたっており、彼女の主張が伺えます。(以前に、当ブログにて紹介いたしました。)

時は流れる

今回は、本LPに収められている≪時は流れる≫を紹介致します。この曲の英語の原題は、≪新しい夢 イエスタディズ・ドリーム YESTERDAY’S DREAMS≫で、過ぎ去った昨日の夢を想い、明日の希望を唄う愛の歌です。作詞・作曲はS・タイソンで、この曲にクロード・ルメールがフランス語歌詞を書き、時の流れのなかでうつろいゆく人生を唄う歌で、仏題は≪時の行方を誰が知ろう≫です。ナナが唄う英語盤の≪新しい夢≫も仏語盤の≪時は流れる≫も、じっくりと見事な演唱を味わって頂くことが出来ます。(≪新しい夢≫は、アルバム・タイトル<愛のメッセージ/ナナ・ムスクーリ>(PHILIPS FDX-317 1977)に収められています。)

時は流れる  QUI SAIT OU VA LE TEMPS

時の行方は 一体誰が知るでしょう?
あの一秒一秒の時は
どのカタコンブヘ行くのでしょう
長い時間の流れは
一体どの大洋を目指すのでしょう
もしかして 過ぎては消えて行く
嘘や影の世界・・・・
それだけにすぎないのではないかしら?


私の幼い体は何処?
昔話の中に きっちり納まって
それとも 思い出の中かしら
形を歪めてしまう鏡
私の未来は一体なに?
やるだけの価値は あるのでしょうか?
楽しい思い出が
一杯詰まっているのでしょうか?
ラ、ラ、ラ・・・・


時の行方は 一体誰が知るでしょう?
あの一秒一秒の時は
どのカタコンブへ行くのでしょう
長い時間の流れは
一体どの大洋を目指すのでしょう
もしかして 過ぎては消えて行く
嘘や影の世界・・・・
それだけにすぎないのではないかしら?

カタコンブ;パリの地下納骨堂の事で。パリ市内にあった大規模墓地を閉鎖した際に発掘された遺骨を、パリの地下採石場があったトンネルや洞窟を利用して収めた納骨堂。

ナナは、想い出を噛み締め、流れゆく時をいとおしむかのように、美しいメロディーに乗って、しみじみとした哀愁を感じさせる歌に唄に上げていきます。

NANA MOUSKOURI “サモス島の女”

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NANA MOUSKOURI “サモス島の女”

写真は、アルバム・タイトル≪NANA MOYΣXOYPH/OMOPΦH XΩPA H XΩPA MOY≫PHILIPS 818 111-1 1984 GREECE)の洋盤LPの表面です。このLPは、曲目の全てがギリシャ語で唄われるギリシャの曲であり、彼女の歌の本質と醍醐味を、たっぷりと味合うことが出来るアルバムに仕上がっています。日本では、同様の邦盤LPが、≪私のアテネナナ・ムスクーリPHILIPS 28PP-5002 1984)として発売されています。(以前に、当ブログにて紹介いたしました。)

サモス島の女

今回は、本LPに収められている≪サモス島の女≫を紹介致します。この曲は、ポピュラーなギリシャ民謡のひとつです。曲名のサモス島は、エーゲ海の東部、トルコ沿岸にあるギリシャの島で、ギリシャ神話の主神ゼウスの正妻である女神ヘーラーの生まれた島とされています。サモス島の女に捧げる恋物語で、郷土色豊かな伴奏も聞きものです。

≪サモス島の女よ、いつサモスへ行くのか? 私は、海岸にバラの花を敷き詰めて、貴方を迎えよう。金のオールと金の帆を持つ船で、貴方を迎えに行こう。顔にホクロのあるサモス島の女よ。黒い瞳の彼女は、私の心を粉々にしてしまった。≫
永田文夫氏の解説を引用

※永田文夫氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

音楽評論家・訳詩家である永田文夫氏は、今年5月13日にお亡くなりになられました。永田氏は、シャンソンの訳詩や普及にも尽力されました。特にナナ・ムスクーリに関しては、デビュー当初より彼女の紹介やLPの解説を担当されました。当方のホームページのナナの紹介記事や当ブログは、永田氏の解説記事に多くを負っております。的確な解説と信頼出来る記事を数多く提供して頂き、感謝に耐えません。ご冥福を心よりお祈りいたします。
サモス島の女 SAMIOTISA  対訳;荒木英世

サモスの女よ サモスの女よ 
いつサモス島ヘ行くの?
サモスの女よ サモスの女よ 
いつサモス島へ行くの?
浜に車を放ってから サモスの女よ
貴方を迎えに行くよ
浜に車を放ってから サモスの女よ
貴方を迎えに行くよ


貴方が乗る船に 
僕は黄金の帆を張って上げる
貴方が乗る船に 
僕は黄金の帆を張って上げる
金製の櫓を用意して サモスの女よ
貴方を迎えに行くよ
金製の櫓を用意して サモスの女よ
貴方を迎えに行くよ


オリーブを持った 
黒い瞳のサモスの女よ
オリーブを持った 
黒い瞳のサモスの女よ
貴方は僕の心を サモスの女よ
粉々にしてしまった
貴方は僕の心を サモスの女よ
粉々にしてしまった


サモスの女よ サモスの女よ 
いつサモス島ヘ行くの?
サモスの女よ サモスの女よ 
いつサモス島ヘ行くの?
浜に車を放ってから サモスの女よ
貴方を迎えに行くよ
浜に車を放ってから サモスの女よ
貴方を迎えに行くよ

ギリシャ色の濃いリズミカルな伴奏に乗って、ギリシャの詩情と色彩を愛するナナの生き生きとした唄声は、音楽の素晴らしさを共感出来ます。